2010年11月18日木曜日

経済は着実に回復、雇用に依然弱さ=米地区連銀総裁

 [ツーソン(米アリゾナ州) 30日 ロイター] 米ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は、米経済の状況について、雇用は依然弱いものの、企業活動は活発で、回復の勢いが増しているとの認識を示した。
 アリゾナ大学エラーマネジメントカレッジが主催する会合で述べた。
 同総裁は、海運や小売りなどのセクターで改善が見られると指摘。米国の景気回復はしっかりとした、持続可能な軌道上にあると述べた。
 同総裁は「外的なショックがない限りは、昨年夏に始まった米経済の回復が反転する可能性は小さいことを示す証拠がある。回復は今年、徐々に勢いが増すだろう」とし、2010年の米国内総生産(GDP)伸び率が3%程度になるとする自身の従来の予想をあらためて示した。
  同総裁は、3%という経済成長率について「危機前の好況期の水準には及ばず、失業率も期待ほどには低下しない可能性がある。しかし、それでも明るい数字であり、注目に値するものだ」との見方を示した。 
 同総裁は、利上げや資産売却はまだ主張していないと発言。ただ、FRBには適切な時期に金融緩和を解除する手段があると述べた。
 <労働市場の難局に言及、講演は全体にタカ派色薄い>
 フィッシャー総裁は、インフレに関してタカ派的な姿勢で知られる。今年は米連邦公開市場委員会(FOMC)での投票権は持っていない。
 同総裁は、クレジット市場の回復に伴い、FRBは緊急流動性供給策の大半を打ち切ることが可能になった、と指摘した。また、債券買い入れという形で導入した長期的な金融緩和については、FRBはそうした資産を秩序あるやり方で売却する方法を模索している、と述べている。
 同総裁は「われわれは今、バランスシートをより正常な内容に戻すことに専念している」とし、FRBは、モーゲージ債ではなく国債が保有資産の大半を占めていた時代に戻ることを望んでいると付け加えた。
 同総裁は、難局が続く労働市場に言及するなど、この日の講演は全体にタカ派的ではなかった。同総裁は、労働市場の弱さは物価上昇圧力の欠如とともに、経済にまだ多くの余剰があることを示すと述べた。
 <MBSの買い入れ再開はない>
 同総裁は、MBSの買い入れ終了に伴い、FRBはMBSを市場に売却する必要があるが、今はその時期ではないとも発言。
 住宅ローン金利は上昇しているが、FRBが再びMBSの買い入れに乗り出すことはないだろうとの見方も示した。
 <財政懸念を背景に利回り上昇>
 フィッシャー総裁は、米国債の利回りが最近上昇していることについて、今年の米財政赤字が1兆4000億ドル程度に達するとみられることへの警戒感が背景にある、と指摘した。10年債利回りはここ2カ月弱で0.30%ポイント上昇し、現在は3.86%程度に達している。
 「政府の債務増大が投資家の信頼感や国債利回りに及ぼす影響は、看過できない」と述べた。一方、利回り上昇が続いたとしても、FRBが国債の追加買い入れという形で救済することはないとの姿勢を示した。
 「救済すれば、FRBは財政悪化の共犯になってしまう」と述べた。

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引用元:RMT(リアルマネートレード)専門サイト『RMTワンファースト』